カテゴリ:未完成( 38 )

思春期


水槽の底で傾いでいる
小さな魚のように
あなたの吐息は急いていた

閉じられない瞼に映る世界は
鈍く霞み


「どうして生まれてきたの?」
あなたの問いかけに答えられない私は


すくいとれない水面のゆらぎよ
静まれ
静まれ
ただ祈るしか他なかったのだ

















by soraemori | 2012-07-11 16:20 | 未完成


ずっと気に掛かっている
あの花の行方


ふるさとへは帰れたか
家族や友だちには
もう会えただろうか


風に揺れていた小さな横顔
薄い羽根のような躰を
横たえる場所に

辿り着くことは
できただろうか



祈りの中で
時々探した


あのときの花の
それからの形を








未完成
by soraemori | 2010-06-08 16:22 | 未完成

おかあさん


おかあさん

おかあさん


ひさしく
文字におこさなかったので



おかあさん

そっと書いてみる



おかあさん
毛布のにおい


おかあさん
透き通った爪


おかあさん
薄いおしろい


おかあさん
泣いてくれたあの夜




おかあさん
わたしは元気

時々
帰りたくなるけれど

今はこの街で
この人達と
日々を生きています




おかあさん
からだには気をつけて


おかあさん
おかあさん

いつまでも



ふるさとはあなただ



おかあさん
by soraemori | 2010-02-03 17:16 | 未完成


幾夜も
幾夜も
時間をかけて
髪を洗う


くり返し
くり返し
ため息のように
梳る


見えない髪の先が
もうとうに
地面に根を張り
私をくるみ
空さえ覆って
私を隠す


隙間から
見えるものだけが
私の信じる世界だとしたら


髪を切るのが
恐ろしい


恐ろしくて
たまらない
by soraemori | 2010-02-03 17:03 | 未完成

あさ


あさ
からうまれる

ひかり
きぼう
いのり


てのなかにくるんで
わたしのなかに
いつものように
しずかにとりこむ


いのふ
というより
むねのおくの
ふかく
いちばん
やわらかなぶぶんに


あどけない
いちにちを

またきょうも
やどす
by soraemori | 2010-01-22 14:25 | 未完成

うそつき


そうだったという

うそだったという


いたいけなあの子の

爪をかむ癖


さかむけが痛いと

ときどき
泣いてた
by soraemori | 2010-01-22 03:39 | 未完成




はじまりの夢は
ビーズの指輪
光りにかざせば
きらきらこころ



悲しみ覚え
痛む胸を
布団の海に
静かに沈めた



ビーズの指輪は
軽すぎて
波間にゆらゆら
浮かぶだろう
by soraemori | 2009-11-28 23:58 | 未完成

冷たい空 (栞)




冷たい空を

すぅっと

めくる




ひらり

隙間から
舞い落ちた紙片




見上げても
あやふやで
途方もなく続く白い空の



ページは
もう
わからなくなりました
by soraemori | 2009-10-29 02:07 | 未完成

秋 ~光り~





光りの力が
弱まってきた

空の外側まで
追い立てられて
もう
逃げ場がなかった





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海はどうだい
光りのお墓

はるかな底に
散り積もり
息絶えてしまった
昔の光り



きっと波は
葬儀屋

厳かな儀式を
永遠に繰り返す
by soraemori | 2009-10-28 22:17 | 未完成

夕暮れ


夕暮れの中に佇む夢を見ました


段だら模様の夕焼けが
肌に髪にと染みてゆき
私の心もまだら色


ほうっと風を吸い込めば
なんだかせつない味がした
しょっぱ甘くてほろ苦い
古い記憶の味がした


夕焼け色にせかされて
私の体はひとみしり
帰りの抜け道探してる
仔猫のようにさびしくて


母の名さがす
父の名さがす

忘れてしまった子どもの頃の
優しい記憶の
名をさがす
by soraemori | 2009-10-22 23:43 | 未完成